サッカー選手(PSMマカッサル)
ポジション:FW、MF
経歴:東京ヴェルディジュニア - 同ジュニアユース - 同ユース
ウィザス高等学校(現・第一学院高等学校)卒業後、中京大学に進学
インドネシア・プレミアリーグ PSMマカッサル所属<取材時>
僕とサッカーの出会いは小学校1年生のとき。同級生のお兄さんに誘われて地元クラブの練習に参加したのですが、正直、最初はむちゃくちゃ嫌で、母に連れられながら大泣きして嫌々練習に行っていました。いざコートに立てば自分は初心者だし、まわりは全員経験者だしで、「こんなにも差があるのか!」って感じでぜんぜんできなかった。初めてだから当然なのにそれがすごく悔しくて、実力差を埋めたい、プレーでみんなを抜いてやる、という強烈な気持ちが生まれましたね。それからどんどんサッカーにのめり込んで、小学6年生の頃に東京ヴェルディのジュニアチームから「うちに来ないか?」と声をかけられました。それからは、平日はジュニアチームの練習に通い、週末は地元クラブに参加するサッカー漬けの日々が始まりました。
中学卒業後もサッカーを続けたくて地元の全日制高校に入学しましたが、人間関係も学校環境も僕に合っていなくて、同級生に目をつけられて時には校内でケンカに巻き込まれたり…。学校が遠くて、6時に家を出たら帰るのは23時すぎ。睡眠を取るために学校に行くような生活になってしまい、練習で疲れていて勉強も手につかず、入学3カ月で留年決定。その様子を見ていた先生が、サッカーに専念できる高校への転入を勧めてくれて、東京ヴェルディのユースチームと連携のあったウィザス高校(現・第一学院高等学校)への転入を決めました。
ウィザス高校には多様なバックボーンの生徒が集まっていて、年に一度のスクーリングでは「こんなにいろんな人がいるんだ!」と感じました。家族のために働きながら勉強している人や、不登校を経験した人…そういう生徒たちと関わって視野が広がったと思います。僕がお世話になった先生は 、悩みや問題を抱えている生徒がいたら 「スポーツを通して学んだ経験を伝えてあげてほしい」と気を遣ってくれたんですよ。文化祭や恋愛といった青春っぽい思い出はなかったけど(笑)、ディベート授業や社会貢献などを通して人との接し方や社会性が身についたし、高校生活とサッカーを両立できたのは通信制だからこそですね。
僕はサッカー選手のなかでも所属チームが多く、プロ生活8シーズンで9チーム経験しています。最初のチームは監督に声をかけてもらって入団したのですが、契約直後にJ3降格が決まり、監督やスタッフが一気に退任。まったく試合に出場できず、今でも忘れないような悔しい言葉を投げられることもありました。自分ではもがき続けていたつもりが、気がついたときにはサッカーを心から楽しめなくなっていました。
もう一度サッカーと向き合うために違う環境でプレーしたいと思い、JFLのチームに移籍。でも、最初の1年間は常に目に見えない恐怖と戦っているような状態でした。その後、ほかのJFLクラブを経て、自分の目標のため、J2のトライアルに挑戦。門前払いされることも多く、2年間で14チーム受けましたが結果はすべて不合格でした。
サッカーを諦めかけていた頃に代理人から連絡があって、タイでプレーのチャンスがある聞き、翌日にはタイへ出発。トライアルを受けて、タイ・リーグ2のチームに加入しました。タイは日本と違って、結果を残した選手が次々と移籍してステップアップできる環境なんです。生き残るためには結果を出し続けるしかないと、強く感じるようになりましたね。2022年にはアジア人得点王を獲得し、それを評価したインドネシア・プレミアリーグのPSMマカッサルが僕に声をかけてくれたんです。タイからインドネシアのチームに移籍する例は少なく、さまざまな偶然が重なって移籍に至りました。
僕がプロを続ける大きなモチベーションの理由に、年俸があります。サッカーは選手生命が短く、現役の間に十分な収入を得る必要があります。セカンドキャリアはもちろん、人のために何かを始めるにも資金が必要です。だから、カタールのトップリーグに入ってプレーするのが今の目標です。日本人ではトップ選手しかプレーできない環境だし、報酬面での待遇もいい。僕みたいな経歴の選手が海外で目標を達成することで、多くの人に夢や希望を与えられたらうれしいですね。
さらに先の目標は、組織の上に立つ人になること。サッカーチームの経営にも興味がありますね。僕は多くのトライアルを受けた経験から、経営陣のいい面と悪い面の両方を見ました。自分であればもっと違うコミュニケーションができる、オーガナイズ方法を変えればもっといいチームになる、無意識でそう感じる場面が多く、いずれは経営側に立ちたいと思うようになりました。そのために、サッカーを通して少しでも多くの世界を見て、人としての深みを身につけたいです。
子どもの頃は中田 英寿さんにすごく憧れていました。練習場や試合会場で実際に見る彼は一人の人間としてすごく魅力的で、経験や人への対応、言動の一つひとつがオーラを作っていると感じました。中田さんのように、魅力的でかっこいいと老若男女から思われる人間になりたい。「調子がいいときは謙虚に、悪いときは堂々と」が僕のポリシー。見てくれている人は必ずいるし、人に対してはうそをつかず、常に本音でいたい。
サッカーをやっている以上、一度は日本代表選手に選ばれたいという想いは持ち続けています。決して簡単じゃないのは百も承知ですが、今できることを一つひとつ積み上げて、少しでも近づきたいです。
インタビュー日時:2022年11月
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